タマネギと木彫のおひな様

きょうは桃の節句。外見はふっくらと優しい形をして、どこかおひな様にも似た雰囲気の野菜と言えばタマネギ。このつなぎ方は、少し無理がありそう…。
でもまず、この写真をご覧下さい。掘り取ったばかりのタマネギがおひな様とお内裏様に見えませんか。

わが家には女の子はいませんが、この季節は当然おひな様を飾ります。おひな様といっても、その素材は伝統的なものから陶器や木彫りといろいろありますが、わが家の目下のお気に入りは木彫です。木に関係する仕事をしているせいもありますが…。
これは松山に出かけ、国の重要文化財として知られる明治中期に建築された道後温泉本館前の商店街にある「伊予一刀彫」の店で見つけた品です。

たしか価格は一番安くて、手のひらに乗るほど小さいものですが、木特有の温かみや一見派手とも思える鮮やかな色づかいに一目惚れしました。「伊予一刀彫」は、大正5年生まれの仏師南雲(西川譲氏)が初代、いま西川隆一氏がこれを継承しているということです。
材料は何かと店で尋ねたら、アオモリヒバということでした。津軽産のヒバをそう呼びますが、能登では「アスナロ」や「アテ」と呼ばれます。古くから、漆器木地(輪島、金澤、津軽、秋田)のほかに塗箸、指物彫刻として使われてきたもののようです。ヒバと呼ばれる木に、木造建築の柱などに使われる外国産のベイヒバがあります。素人目には色合いや木理は国産ヒバにそっくりですが、ベイヒバはヒノキ科ヒノキ属であり、国産のヒバはヒノキ科アスナロ属です。後者はヒノキチオールという精油を含むので匂いをかぐと独特の良い香りがします。白アリに強く耐朽性は抜群ですが、ヒバを含むヒノキ科の木材は、湿潤な日本の気候下でもっとも腐れに強い木のグループです。

前置きが長くなりましたが、これが今年のタマネギの状態です。少なくともここ10年間は観測されたことのない零下6℃という冷温。そして「寒」と「暖」の極端な変化にめげず、時々訪れる春の陽射しと雨の刺激を受けて、まるで枯れそうな黄ばんだ色から、黒々とした力強い色に変化してきました。

たぶん土の中で、タマネギの根は活動を始め養分や水を吸収して葉に送り、葉は光合成を行い栄養分をつくり、地中で育つ可愛いおひな様のような、白く小さいタマネギの玉に蓄え始めているのではないでしょうか。タマネギの収穫は、いつもだと5月の終わりから6月の初め。これからの気候変化や病気の発生と紆余曲折が待ち構えていますが、それらに負けず頑張って成長してほしいものです。

  • そば打ちの道具

最近仲間から、蕎麦打ちを学んだわが家の奥さま。一念発起して、おひな様の日にそば打ち道具一式を品揃えしました。

こね鉢はトチノキ材でできていて、14,5年ほど前に買って押入れに眠っていたもので、これが一番高価。こま板と麺棒はスプルース、まな板はアオモリヒバと材料は色々ですが、使う蕎麦粉は鹿児島の妹夫婦が苦労して育てた純国産。味よりもまずは、うまく蕎麦になるかどうか。二八蕎麦あたりから始めるんでしょうか。