タマネギの苗の太さ論議

毎週日曜の朝は、特別の用事がない限りNHKの「野菜の時間」を見ています。この番組は家庭菜園愛好者がよく見ているはずです。けさの主テーマは「タマネギの育て方」。番組の常勤講師は、大きなお腹で知られる藤田先生です。この先生が登場する家庭菜園の雑誌の同じ号で自称“Scientific farmer”もとりあげられたことから、親近感を感じているといったら、言葉が過ぎるかも知れません。
余計なことですが少し減量されたらいいのに、と感じます。しかし野菜の話になると、藤田先生は、体ににあわない軽妙なお芝居を取り入れて、面白おかしく説明してくれます。お腹はそれでいいのかも。
ところがきょうの番組で、藤田先生は「タマネギの苗は、鉛筆の太さのものを揃えてください。それ以下のものは枯れやすいので、さけましょう」と説明されました。“Scientific farmer”にとって、「鉛筆より太い苗のタマネギはトウが立ちやすい」ということはモノの本で知っていたが、「鉛筆の太さのものを選んで植えよう」というのは初めて。加えて「鉛筆より細い苗は枯れやすい」というのも、とってもミラクル。わが家はいつも鉛筆どころか、その半分ほどのほっそい苗を植えているし、きのうの苗もそうでした。

鉛筆の太さって、どのくらいあるか。測ってみたら8ミリ前後。とすると、わが家の苗はせいぜい3〜4ミリで、鉛筆の半分足らずの細さです。毎年これくらいの規格の苗を植えていますが、細いから枯れたという体験はありません。たぶん、藤田先生の説明は、何か前提条件をおいての話だったのかも知れませんので、これで忘れることにします。ということで苗の太さ論議は、これでおしまいです。

それよりも、「きのう植えた」と書きましたが実際は、私がやっているわけではありません。正体を明かすと家庭菜園歴14年の(*^_^*)でした。とても手慣れています。今年も赤玉40本、白玉120本をマルチシートの穴に植えるのにかかった時間はおよそ40分ほど。

上の写真を見て下さい。苗の穂先を切ってあります。これには、ちょっとした訳があるのです。ここにありますが、“Scientific farmer”が書いた08年11月5日のブログ。タマネギを植える季節になると結構、菜園家の皆さんにご覧いただいているみたいですが、タマネギは穂先を切って植えると、生育が順調なんです。古いことなので、どなたに教えて頂いたか、すっかり忘れましたが、このことはきのうの朝、苗をとりにいった(*^_^*)も、園芸店の社長から教えられたというのですから、いまでは広く受け入れられているようです。つまり植えられた直後の苗は、スムーズに水を吸収できません。根から水分を吸収するよりも葉からの蒸散量が多いと、苗が萎れてしまいます。穂先を切ることによって、蒸散量が抑制され、萎れずにすむというわけです。植えつけ直後に萎れてしまった苗を見ることがありますが、その状態から元気を取り戻すには相当の体力を使うのではないか、と感じます。けさ小雨模様だったとはいえ、ほっそい苗は、こんな風にしゃきっとしていました。作戦成功というわけです。

話しは変わりますが、タマネギの渡来はいつのことか。そうした手がかりを得たいとき、お世話になる慶応大学の磯野直秀名誉教授の「明治前渡来植物年表」には、1775年のところに、“アスパラ・サラダナ・タマネギ・パセリ 「本年来日したツェンペリーが長崎に栽培されていると記す『江戸参府随行記:平凡社東洋文庫訳本』による。」”と記されています。

ツェンペリーは、1743年スゥエーデン生まれのCarl Peter Thunberg(ツンベルク、ツェンベリー)のこと。彼は幕末のころ来日して、日本の植物の調査に力を尽くしたことから、「日本の植物の父」とも言われる研究者です。なんでも、植物の命名法を世界に広めたリンネに医学と博物学を学んだというのです。写真はオランダのライデン大学の植物園にたつリンネの胸像です。

タマネギの渡来に戻りますが、「1775年に来日したツェンペリーがタマネギが長崎で栽培されているのを確認した」というのですが、実際はいつ渡来したのか。思いがけない植物が、思いがけない理由で渡来していますが、はたして原産地が地中海とも中央アジアともされるタマネギ。誰がどういう理由で、日本に持ち込んだのかは謎です。
いまではそれなしにはすまされない食材ですが、渡来は200年以上前でも、すぐに食用には用いられなかったのではないでしょうか。包丁で切れば涙が出てしまう、生で丸かじりすると辛いタマネギ。日本人が食べるようになったのはいつのことか。海軍が西洋式のスタイルをとりいれ食事メニューにカレーライスが入ったことなどがきっかけではないかと想像していますが、この辺りの事情をご存じの方に教えて頂きたいものです。



ーきょうの一枚 フェンネルとタマネギのサラダ
と、せっかくタマネギの話題になりましたので、きょうは畑で育つフェンネルとタマネギのサラダをつくってみました。見るからに食欲をそそるフェンネル。色がきれいで、香りと甘味が素晴らしい。

タマネギは昨シーズンのもの。これをスライスして水にさらし、フェンネルの鱗形や茎、葉を刻み、ローゼルの塩漬けを小さく刻んで甘酢で味付けしてみました。週末Cookerの思いつきメニューですが、はじめてにしてはなかなかの出来栄えでした。自画自賛がすぎますか…。