トマトは成熟しても形が崩れにくい

6月は、雨量がやや少なめとはいえ、降雨日数は平年並み。それに平均気温、日照時間もほぼ例年並み。しかし、畑ではアスパラ2株に新芽が出はじめました。いつもだと4〜5月半ばと8月末〜9月半ばの2回ですから、ひと月以上も早い。これはどういうことでしょうか。
写真は10年以上経過したアスパラの古株。今年も4月にはたくさん芽を出して食卓をにぎわせてくれました。今回2か月も早く出てきた芽は細いし、季節も違うので、このまま伸ばすことにしました。

すでに開いたものもあります。

こちらは、数年しかたたない新株ですが、写真のように新芽が伸びています。これもこのまま伸ばすことにしました。この写真はα6000という某大手メーカーのデジカメで撮影しましたが、ボケが出やすい!!!

アスパラのこうした発生時期の変化は初めてのことですね。web上で探してみても、同様の事例は見つからないので、わが家の畑だけのことかも知れませんが、なんだか変な感じです。
さて、またまたトマトの話題です。まずこの写真をみてください。桃、トマト、キュウイ、柚子の青い果実ですが、どれも固くてかじることさえ難しい。無理してかじっても苦味やえぐみを感じるだけ。果物は、動物に食べてもらうことで自分の生息地を広げようとしています。果実に含まれるタネを糞として排泄してもらうことによって、自力では動けない植物が生息の場を広げるのです。だからタネが成熟しないうちに食べられないように、固い外皮で保護しているわけです。

ところが成熟すると、写真のように見るからに美味しそうな色合いになります。写真の桃は、サンタローザという品種。薄い外皮に刃物でちょっとした切れ目を入れ、そこから皮をむいてゆくと綺麗にはがれます。桃はとても傷つきやすいので、樹上で完熟する一歩手前のところで収穫して追熟させてから食べるのがコツだということがわかってきました。果物の追熟となると、エチレンが植物ホルモンとして作用しているということですが、そのことは別の機会にしたいと思います。

問題は写真の下半分にあるトマトです。トマトは赤く熟すると、そのまま丸かじりできますが、桃に比べれば傷つきにくい。赤く熟して柔らかくなっても、果実がしっかりしているので簡単にはつぶれません。そこには、ちょっとした仕掛けがあるようです。
調べてみると、トマトの細胞壁には「ペクチン」という成分が半分以上を占め、そのほかに「ヘミセルロース」、「セルロース」が含まれています。木材の細胞壁の主成分であるセルロースとヘミセルロースが、トマトに含まれているというのは驚きです。これまではトマトが成熟する過程では、細胞を結びつけているペクチンが分解して細胞壁に変化が生じ柔らかくなると考えられてきたようですが、これには不明な点が多いようです。
図はトマトの模式図です。トマトの果実は一番外側の「外果皮」、果肉に当たる「中果皮」および「内果皮」、その中のゼリー状組織にわけられます。

成熟にともない、実が柔らかくなる一方で、形をしっかり維持する工夫は、トマトのどこにあるのか。さいきん明らかになってきたことを簡単に書くと次のようなことです。専門的には、ヘミセルロース細胞壁を構成しているセルロース微繊維を結びつけるはたらきをしていることから「架橋性多糖」と呼ばれます。
セルロース微繊維を結びつけるはたらきをしているヘミセルロースは、中果皮では成熟に合わせて変化して果実を軟化させる一方で、形を維持するために必要なはたらき、つまりある組織の結びつきを軟らかくしながら、一方で結びつきを固める働きもしているというのです。架橋性多糖を合成する酵素の増減の研究から、そのようなことが言えるということです。さらに丈夫な「クチクラ層」を持つ外果皮や、液化した果実内部との境にあたる内果皮では、成熟に伴いヘミセルロースが増加して果実の強度維持が行われているということでした。実際に作用しているヘミセルロースには、キシログルカンとか、いくつかの種類があるのですが、そのことは省きます。
と、ここまではいいのですが、トマトは果実が熟れたあとも、美しい形を維持しようとするのは、なぜなのか。動物からみれば、形が多少こわれていようが、軟らかくてうまければいいはずです。そう考えてみると、生き物の世界は奥が深くてわからないことが多いですね!!!


  • きょうの一枚  ジャンボなブルーベリー

お隣のSさんのブルーべりーです。こんなに大きくて甘い。ご馳走さまでした。