日本原産の野菜はどこに?

最近知ったのですが、中国の古典「菜根譚」(洪自誠著)の書名は、宋の汪信民の“人、常に菜根を咬み得ば、即ち百事做(な)すべし”という言葉にちなんだものだとか。“菜根は堅くて筋が多い。これをかみしめてこそものの真の味わいがわかる”とか、“いつも堅い野菜を咬みしめ味わう忍耐力があれば、なしえないことはない”などと解釈はいくつかあるようですが、自称“Scientific farmer”のもっぱらの関心事は、“堅くて筋の多い野菜”とは、はたしてどんな野菜だろうかということ。
わが家の畑を見回すとどうか。まず目につくのがこのハクサイですが、日清・日露の兵隊が持ち帰ったといわれていて、鍋にしてもサラダで食べても、とても軟らくてジューシー。それに菜根をひっくり返せば根菜。ハクサイは根菜ではありませんから。

それならこのチンゲンサイはどうか。トウが立ったものは別として、この時期のチンゲンサイは筋がなくて、胡麻和えや炒め物にすると、とても美味。これも葉物野菜。

葉物が続きますが、アカクキホウレンソウ。おひたしや卵とじにすると柔らかくて美味い。

ハリハリ鍋でもサラダでもいけるミズナ。いま青々として元気一杯で育っています。これも葉物。

次に青首ダイコンです。家庭菜園歴14年ですが、今年のダイコンは出来栄え最高!ダイコンはトウがたつと、少しは歯ごたえが出てくるかも知れません。

それに地中海地方や中東原産とされるダイコンの原種は、中国にわたっても「菜根を咬めば…」というような堅さだったのかも知れない。
日本へは、中国から弥生時代に渡来したという説があります。たぶん日本で品種改良されて、日本人の好みの柔らかいものができたせいで、“堅い菜根”と言われてもピンと来ないのかも知れません。

次はニンジン。収穫はまだですが、ニンジンを生で食べれば少しは噛みごたえ、いや咬みごたえがありますが、毎日セリ科のニンジンを咬むということにはならないような気がします。国内で記録が出てくるのは1631年。

わが家の畑にはないので、余談になりますが、堅い根菜といえば戦時中、オーストラリア人捕虜から「木を煮て食べさせて虐待した」との誤解を受けたゴボウのことを忘れてはなりません。ゴボウの野生種はヨーロッパとアジアに広く分布しており、相当古い時代に中国から渡来されたとされています。食用にしているのは日本と台湾だけのようなので、「木を食べさせられた」と誤解されてもやむを得ない気がします。
果たして菜根はどの野菜なのか。ここまで見ると、やはり大根ではないかという気がしてきました。

しかし菜根の問題以上に、気になり始めたのは、ほとんどの野菜が外国原産だということ。たとえば、中央アジア、中国西部が原産地とされるネギ。そろそろ葉が枯れ始めます。

そして地中海原産とされるルッコラ。わが家で栽培するようになって5年程でしょうか。

いま食べ頃のサニーレタス。これも日本原産ではない。

じゃ、日本原産の野菜って、何があるのとなるといま畑で育つセリやフキ。こんなものが野菜か、と笑われそうですが。

そして花を咲かせ始めたアシタバ。これらが日本原産だというのですが、どれも、あくの強いものばかり。これじゃ胃に悪いはずです。

農林水産省野菜試験場育種研究室・室長の芦澤正和さんのweb「伝統野菜といわれるもの」のデータが見つかりました。クリックすると拡大しますが、これでみても日本に自生していた野菜は20種類ほどです。

こうしてみると、日本人の食卓は、外国産の野菜なしには、成り立たない現状です。外来種と称して、外国産の植物の一部をまるで悪者扱いしていますが、これも人間の身勝手のような気がしてきました。いろいろと難しい議論はあるのでしょうが。
と結局、畑の野菜の紹介になりましたが、いま育つ野菜の名前だけでもあげると、このほかにニンニク、タマネギ、ケール、キャベツ、ワサビナ、フェンネルコマツナ、タカナ、スナップエンドウ、ソラマメ、カブ…と20種類ほど。いつも思うのですが、家庭菜園のだいご味は、少量多品種栽培。せまい畑ですが、工夫しだいで菜園ライフをエンジョイできます。


  • きょうの一枚 ソラマメ

ソラマメは、黒いマルチシートのおかげか、順調に生育。そしてあのアブラムシの姿が。年が明けたらシルバーマルチシート、何とかしたい。