イギリスのアオキ、オシドリなどの思い出

畑のアオキの花が咲きました。このアオキは、山から採ってとってきて9年目。ここに植栽直後の写真がありますが、どちらかといえば「日蔭で湿り気が多いところ」を好むアオキにとって、ここは直射日光が当たって乾き過ぎ。だから初めはなかなか成長しなかったのですが、フキやドクダミなどの野草の成長とともに最近ようやく丈の高さが1m近くに成長して、初めて花をつけたというわけです。

アオキは雌雄異株。つまりオスの木とメスの木があるということ。花をアップにすると、紫色の4枚の花びらの上に、それぞれ1個ずつ明るい色のものが見えます。それが雄蕊ですから、畑の木はオスということになります。

じつはアオキをめぐるエピソードが、「幕末日本探訪記」〜江戸と北京〜(1863.2)に書かれています。
この本は、イギリスの園芸学者として知られるロバートフォーチュンが1860年から1年あまり、日本と中国(当時は清国)の首都を中心に植物採集旅行をしたときの見聞記。武田薬品工業副社長、同会長を歴任された三宅馨博士によって翻訳されたものです。
1860年10月30日(万延元年)、長崎経由で神奈川港に着いたロバートフォーチュンは上陸後、神奈川地区(現在の神奈川区?)の寺に滞在し毎日、近郊を遊覧(視察)。そこで目にした日本の自然や日本人の暮らし、植物探しの旅で訪れた植木の町「染井村」(現在の駒込)や旅先で見た日本の風俗のこと、日本の調査を終えて訪ねたシナ(清国)の旅を記録しています。日本で珍しい植物や樹木を見つけては、園芸学者らしくその特徴を観察し、英国の気候に耐えられないかなどを思案する様子も随所に見られますが、そのなかに次の一節があります。


アオキの雄株
アオキの新種があったが、それは英国種の斑入りではなく、光沢のある濃緑の葉を持っていて、森の日蔭や生垣でよく目についた。これはすでに英国にも輸入されているので、立派な常緑灌木として鑑賞されるだろう。そして冬から春にかけて、英国種のホーリー・ベールに似た、オリーブと同じくらいの大きさの漿果が沢山実る。
 私の訪日の目的の一つは、イギリスの在来品種のアオキの雌木のために、雄木の品種を手に入れることであった。―――
つまり、イギリスにはアオキがあったのですが、雌木しかないため実をならせなかった、それで雄木を求めることも来日の目的のひとつであったというのです。
ここで先週に続き、私の英仏旅行での思い出を紹介します。写真はロンドン大学の構内に植えられていたアオキです。当時の私は、日本から運ばれたアオキが英国で改良され斑入りがつくられたのだろう、と思いこんだまま、この写真を撮りました。しかしこの本には、「英国種」とありますので、それは勘違いだったようです。

先週紹介したスズメの写真にも、ちょこっと斑入りのアオキの葉が写っていますが、これはその木の花。雌蕊があるので、この木は雌木です。よくこんな写真を撮っていたものだ、と今更のことですが、驚いています。

これはキューガーデン内で撮ったアオキの写真です。注意して見て頂くと、ところどころに赤い実がなっていました。つまりロバートフォーチュンの努力が実ったということですね。

畑のアオキが花をつけたので、つい英国で見たアオキのこと、そして英国の植物学者のエピソードを思い出したということでした。
ところで、先週の高浜虚子の句碑の横にあった記念碑は、こんなでした。クリックしてオリジナルサイズで見て頂くと、雀を詠んだ俳句の英訳を読むことができます。



この写真を撮ったときは、綺麗な鳥がいるな、という程度の認識でしたが、どうもオシドリのようです。手前はメス?

同じく、これも当時撮った写真ですが、鳥の名前はわかりません。ひょうきんな表情が可愛い。