チカラ持ちの柿の小枝

畑に行く途中、見かける柿の木です。今年は豊作で枝もたわわに実がなっています。“今年は”と強調したのは、いつもはそうでないということ。ふだんはカキノヘタムシの被害や、イラガの被害が出て、こんなにたくさんの実をつけたのは久しぶり。

これだけなら、のどかな秋の景色です。しかし割りばし程度の太さの小枝に7,8個の実がなっていることに気がつくと、それだけではすまされません。1個の実の重さが150gとして、小枝にかかる総重量は1.0kg〜1.2kg。しかも2週間前に台風が通過したので、少しは風にもまれたはずで、それにもかかわらず枝が折れたりした痕跡は見られません。この家の方に伺っても、被害はなかったということ。少し大げさですが、こうした柿の小枝のチカラについて、ちょこっと考えてみます。何だかとてもScientificな話の展開?になりそうです。

もちろん、近くのミカンも小枝に重い実をならせています。リンゴやナシを含めて果樹の小枝は想像以上に強いのでしょう。環境に適応する力がないと生き残れない、厳しい現実があります。

柿の木のチカラの話に戻ります。「チカラ持ち」というのは、重いものを「ぶら下げるチカラ」、つまり「張力」が大きいということです。しかし小枝に横からの強いチカラが加わるとどうなるか。おそらく、ぶら下げるチカラに比べれば、こちらに対する抵抗力は弱い。だから、ぽっきりと折れてしまうような気がします。

もうひとつ忘れてならないのは、柿の木は裂けやすいということ。子供の頃、「柿の枝は折れやすいから木に登るときは気をつけろ」と注意されたことをおぼえています。お隣の柿の木も、今回の台風で太い幹が裂けていました。柿の枝は、ものをぶら下げるチカラは強くても、引き裂くチカラには弱い。実際どうでしょうか。

きょうのたわ言をまとめると、柿の台風対策のポイントが浮かび上がります。台風のたびに、これまでは畑の富有柿の被害を恐れて、キューリネットで固定する対策をしましたが、おおむねこの対策は間違いなかったということです。「裂けそうな枝を強風から守る」ことに着目して、もう少しきめ細かく考えれば、さらに効果が出そうです。何だそれだけのことか。と、ここまで読んだ方を、かっくりさせたかも知れません。
そこで柿の話題をもうひとつ。団塊の世代が、初めて握ったゴルフのドライバーのヘッドは、パーシモン製でした。パーシモンとは、柿の木のこと。木材としての密度の高い柿の木は、ゴルフボールを遠くに飛ばす反発力があるから使われるのです。いまはチタン合金製など金属ヘッドのゴルフクラブが主流ですが…。
木造建築で木材を柱や梁として使う場合、その木材の強度が問題になります。建築材として使用される木材については、設計者のためのデータが整備されており公開されています。しかし柿の木が建築に使用されることは少ないせいか、そうしたデータはなかなか見当たりません。専門書で調べれば見つかるかも知れませんが…。
最後にひとつ。柿と建築とのかかわりに「柿渋」があります。木材の成分には、セルロースなどの主成分のほかに、副成分と呼ばれるタンニンなどがあります。漁網などの腐れ防止に、防腐作用のある柿渋が使われるようですが、木材の腐れ防止にも効果が期待できるということです。なかなか柿は奥が深いようです。




  • きょうの一枚 「柿の実、金銀銅」

いつも珍しい野菜などを頂く、Sさんちでは大きな甘柿がなっていました。重さを測ったら何と360g(金)。秤の上がそれで、これは甘い柿でした。右下のとんがり柿は、わが家の渋柿280g(銀)でいま干し柿に変身中、その右のフユウガキが、今年わが家で一番大きかった260g(銅)。

10月11日からちょうど、2週間でできあがった干し柿。1個を半分ずつ食べましたが、最高に甘い味でした。(*^_^*)は、早くも来年に夢を馳せています。