木戸口の椿

今月初め、義父の法事のため3日半休んで帰省しました。盆、正月以外でこんなに長く休むのは久しぶりのこと。空港まで妻のすぐ下の妹に迎えにきてもらい、車で約1時間。高速道路の開通で、かつてとは比較にならないほど移動時間が短かくなった。それにバスや電車の乗り継ぎに比べ、車での迎えは有難い。錦江湾に浮かぶ桜島や、右手の高台にある吉野などの眺めは一年半ぶり。高速道路を降り、しばらく市内を走るうちに、背の高い椿の木が片側に立ち並ぶ長さ20m余りの細い路地に到着。この季節は路地にたくさんの椿の花が落ちていました(写真は家側から)。

鹿児島では、家の敷地に通じる路地を「木戸口」と呼ぶ。おそらく木戸と呼ばれる小さな開き戸があって、そういう呼び方が定着したのかも知れない。しかしここらには開き戸のあるところは少ない。開き戸はなくとも、田舎では、庭に通じる路地を木戸口とか、木戸と呼ぶ。いかにも鹿児島らしい言葉の響きが懐かしい。
毎朝掃除しても、夕方には写真のようになる。17年前に亡くなった義父は毎日、朝飯前にこの路地を掃くのが日課だったという。この季節は椿の落花。そこには四季折々の風景があったのかも知れません。

翌日は義父の命日。法要があるので朝早く起きて、同じ敷地に住む二番目の妹と木戸口を掃いてみました。使うのは、使い古した手づくりの竹ぼうき。通路に散らかった椿の花は車に踏まれて、路地にこびりついている。なかなか綺麗にとれないので、掃き集めるには多少の工夫が必要。それでも20分ほどで、大きな塵取り3杯ほどのゴミと化した椿の花や葉が集まった。いまの季節には、父もこんな風に掃除していたのかしら。

路地を掃いていると時々、ボタッ、ボタッと生々しい音が聞こえる。頭上の枝から、椿の花が落ちているのです。せっかく掃いたのに、また散らかる。しかし掃いたあとに落ちてきた花の片付けは、明日の仕事と割り切って、赤い花を観察してみた。
ここらで見られる椿は、ツバキ科ツバキ属ヤブツバキ(Camellia japonica L.)で1属1種。「椿、ツバキ」はその略称。椿によく似たサザンカとの区別は、椿の花弁(花びら)の付け根部がお互いにつながっているのに対し、サザンカは一枚づつ分かれていること。落ちている花の花弁の数は7〜8枚。藪で育つからヤブツバキ、それとも藪のように群生するからそういう名なのか。やぼったい名前の割には、花弁の赤、雄蕊の黄色が調和してとてもかわいらしい。

と、掃除の話題だけになりましたが、17回忌にお集まりいただいた親戚、親族の皆さんとの久しぶりの語らい。母と3人娘、その婿たちによる温泉旅行は、長く忘れがたい、大切な思い出になりそうです。いろいろとお世話になり、有難うございました。