土を耕す小さな生き物たち

(前日からの続きです)
たい肥が野菜を元気にする仕組み。いったいどういうことなのでしょうか?結論から書きます。
土の中には小さな生きものがたくさん棲んでおり土や堆肥を食べています。食べられた土や砂、有機物は生き物の体内を通過する際、消化物と混じり合い小さな団子状の塊として排泄され、それらが互いに接着して、いわゆる土の団粒構造ができます。植物は、団粒構造が発達した土の中に根をのばし、新鮮な酸素や養分を含んだ水を吸収することで元気に生育できます。つまり野菜にたい肥を与えていたつもりでしたが、実際は地中の小さな生き物たちにを与え、その生き物たちが団粒構造の発達した土をつくる活動を手伝っていたというわけです。
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ここをクリックするとダンゴムシやミミズが確認できます。

上の写真は、収穫跡地の土を掘り起こしたところ。まだ腐り切っていない稲わらなどの有機物のほかに、ダンゴムシやヒメミミズ、カブトムシの幼虫など小さな生き物がたくさんいます。団粒構造といっても肉眼では見えませんが土を触ると、ふわふわ、しっとりの感触が得られます。一見したところ、とるに足りない少量の土の中にも、膨大な数の小さな生き物たちが生息しているのだそうです。

団粒構造が発達した土が、どうして野菜の生育に役立つのか。
土中にある水は、表面張力によって土粒と土粒の空隙に保持されている水玉状態の水、それから土の粒子と固く結びついた水、水自体の重さで土中を自由に移動する水、の3タイプにわけられます。植物の根が吸収できるのは、1番目の土粒と土粒の空隙にある水。2番目の水は強い力で土と結びついているため植物の根は吸収できません。また3番目の水は雨のあとなどに一時的に土の中にあふれる水であり、根がこれを吸収するにはかなり強い力が必要だそうです。
それはどういうことか。密閉されたドリンクの容器にストローを刺してジュースを吸おうとしても空気の入る穴がないと吸うことができないことを思い出して下さい。根が水を吸収するには、水の吸収にあわせて空気が移動できる隙間があること、小さな力で吸い込める水が存在することが必要であり、団粒構造の発達した土は、根にそうした条件を与えてくれるというわけです。ここをクリックで拡大。

また、3番目の水が土の中に停滞すると植物の根は呼吸できないため衰弱します。図が小さいのでわかりにくいですが、左が団粒構造が発達した土と水との関係であり、こうした隙間に根は伸びて水を吸収します。右は水と土が混ざり合った泥水の状態。野菜を植えた土がこんな状態だと根が水を吸収できないので、野菜は萎れてしまいます。
少し長くなりますが、土を耕す小さな生き物たちのことです。土壌学の研究者として知られる久間一剛博士の「土の科学」によれば、有名なダーウィンは死の直前に書いた『ミミズの活動による肥沃土の形成とミミズの習性の観察』という本の中で、イングランドの多くの地域で1ha当たり25トン以上の土が年々ミミズのからだを通っていることを明らかにしているそうです。ミミズが土壌を食べ糞の塊として排泄することで、土が耕され植物が生育しやすい土地が作り出されていることを具体的な数値で示したのはダーウィンが最初だそうです。ミミズの働きについては、その後多くの研究者の報告があり、アフリカでの研究には、年間1ha当たり2000トン以上という数字をあげている研究者もいるようです。これはミミズが10〜20cmの表土全体を耕したという驚くべき数値です。「土の科学」は、土のことをとてもわかりやすく教えてくれます。有機農業や土づくりを目指す方には、とてもお薦めです。

土の科学 (PHPサイエンス・ワールド新書)

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このブログのタイトルの「土と生き物たち」は決してそうした知識があって命名したわけではありません。ただ、このような知識を学ぶにつけ、私たちの暮らしを支えてくれる土壌や小さな生き物たちを大切にしなければという気持ちがさらに強く湧いてくるのを感じます。
もちろん、悪さをする害虫もいますので、その辺りのバランスが大切ですが…。


いま盛りです。