鶴岡八幡宮の大イチョウ

強風で倒れ再生のため根株を移植された鶴岡八幡宮の大イチョウ。これを自分の目で確かめたくて鎌倉に行ってきました。
鎌倉は歴史の街。有名な鎌倉の大仏様のほかに鎌倉五山をはじめ名刹が多い。以前はほとんど関心がなかったのに、どうして鎌倉を訪ねることになったのか。寄る年波といえば笑われそうですが、若い頃、お世話になってきた鎌倉在住の方が昨年、亡くなられたのに気づかず失礼しており、せめてお彼岸に墓参りでもできたらという気持ちがどこかにありました。
それと家族の思い出も。だいぶ古いことですが、上京してきた両親と妻が鎌倉を訪ね、大仏様の前で撮影した懐かしい写真があるのでしが、この4月にはその父の13回忌。そんなつながりもあって、「ぶらり旅」となりました。大昔に一度訪ねたことがあるのに…、年とともに記憶は薄れてきて、まるで初めての場所のような感じ。
車では渋滞が心配なので電車で行くことにして家から約2時間。JR横須賀線北鎌倉駅で下車したが、この駅は円覚寺明月院建長寺に近いせいか、ホームから改札口まで人の列ができていました。駅に近い円覚寺に立ち寄っても観光や墓参りの方々で大賑わい。

この寺は蒙古来襲の後、時の執権北条時宗公が両軍の殉死者を弔いたいとして建てたものだとか。仏殿、舎利殿などの間を緩やかに登る坂道を奥に進むと、北条時宗公をまつる廟の庭にたつ満開のハクモクレンに出会う。高くそびえる樹木を飾るように白い花が咲き誇り、空を背に建物の瓦屋根と調和して見事な眺めでした。写真をクリックしてオリジナルサイズでご覧下さい。
本日の日経夕刊6面「耳を澄まして あの歌 この句」で木蓮を扱っていました。「ここに立つ樹が木蓮といふことをまた一年は忘れるだらう 萩原裕幸」、なるほど、白い花がハクモクレンの存在を気づかせるのだ。

さすが古都鎌倉です。若い見学者も多く、時宗夫人の菩提を弔う黄梅院の前で手をあわせる姿が多く見られました。自然に手をあわせる。日ごろはそんな機会が少なくなりつつありますが、荘厳な雰囲気の中では自然にそうした気持ちになるのでしょう。

寺の出口で見かけたキブシの花。それほど珍しくもない樹木だが、実物は久しぶり。この花を見て思い出すこと、それはキブシの実(み)はお歯黒や染色に使用されるタンニンを多く含むこと。本来のタンニンは、ヌルデの木の虫嬰(ちゅうえい、虫コブ)から抽出した五倍子(フシ)でつくる。しかしキブシの実を乾燥させ粉にしたもので代用できます。こうしたことからフシをつくる木ということで、この樹木をキブシと呼び、漢字は「五倍子」をあてるようになったということです。

円覚寺から徒歩10分ほどで建長寺に到着。五山一位というだけあって、ここの三門も立派。現地には山門という表記の看板があり、寺で頂いたリーフレットには三門と書いてある。これも色々のいわれがあるのかも知れません。

境内の大木は寺院の歴史や権威を示す大切な存在。しかし生き物であるがゆえに、老木になれば病気になったり、樹勢が衰えたりで管理も大変です。このビャクシンも樹勢回復の措置がとられていました。
樹木から景観や美観、安らぎと言った恵みを受けるだけでなく、強風で樹木が倒れたりすれば、様々な事態が起きるので、日頃の維持管理が大切。たとえば倒れる危険のある老木には支柱を添えるとか、伸びすぎて風で落花しそう枝は早めに剪定するとか。

次は建長寺から徒歩で20分ほどのところになる鶴岡八幡宮。強風で倒れた大銀杏は本宮に上がるこの大石段の左側にたっていたということ。竹がたてられ注連縄や紙の飾りのある場所がありましたが、そこではないか。ここらは海からの風が石段にぶつかることで風速が倍加することもあるのかな。

数mのところで幹が切断され、元の位置(下の写真右手の白い階段下の土が盛り上がったところ?)の隣に移植されていましたが、その姿は痛々しい。イチョウは生命力の旺盛な樹種。幹を切断せずとも、元のままたて直せば活着するのではないかとの意見もあったようですが、もともと根が弱っており、倒れた時にそれらの根が切れたらしい。大イチョウを元のまま建て直した後、大量の新葉が芽吹けば葉から大量の水を蒸散するので、根からの水分の吸収が間にあわないとの判断もあって切断したもののようです。
何とか活着してほしいということで、「活着祈願の記帳所」が設けられ、そこには人の列ができていました。歴史のあるイチョウに対する関係者の思いの深さを感じました。お祈りや信心は大切です。しかし生き物を扱うには、きちんとした技術や知識が不可欠であり、今回の出来事をきっかけに社会全体がそうした認識を深めることが大切だと感じました。

次はバスに乗り大仏様へ。大仏殿は1498年の海潮で倒壊してしまったというのですが、海潮とは津波のことでしょうか。それいらい、露天のままの大仏になってしまったということ。

大仏様は美男が多いのですが、この阿弥陀仏もなかなかのもの。関東大震災では首が落ちることはなかったが、被害は受けたということで、これからの地震に耐えるよう免震工法がとられているらしい。地震国日本、これだけの大きな大仏様だと日ごろの備えも大変だと思います。

最後が長谷寺。階段を上り見晴台にたつと眼下に由比ヶ浜が見えて、なかなかの絶景です。敷地内には二つの池があったり花木や草本の花が咲いたりしていてこれまでの中では華やかな雰囲気のある寺でした。


それぞれの古刹の歴史や由来、文化には、凡人にははかりしれない奥深いものがあるのでしょうが、Scientific Farmerの関心はつい自然とか、樹木や植物のことに向かってしまいました。
墓参りはかないませんでしたが、こうして鎌倉で時間を過ごしたことで、多少は胸のつかえが降りたように感じました。




−きょうの一枚  玉之浦の開花
ここ数日の急な気温上昇で玉之浦が開花し始めた。残念ながらカイガラムシを駆除しなかったためか、葉の色が黄ばんでいる。

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