ライデン大学植物園とフェルメールの絵

きょうはマウリッツハウスという美術館でフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を見るため電車でハーグに移動します。
きのうはアムステルダム市内でゴッホ美術館を見たばかりですから、いつもの菜園tific Farmerならぬ行動が気になるところです。それにしても世界中の人々を魅了し続けるゴッホの作品群は凄いと感じました。有名な「ひまわり」などもあって、ここはゴッホの絵に関しては世界一の収蔵数を誇る美術館だそうです。美的センスの薄いFarmer的には樹木や草花、田園風景などを描いた絵が強く心に残りました。

きのうアップできなかった動画があります。さすが花の国オランダと思わせる「シンゲルの花市」という長さ300m?ほどの路地で撮ったもの。そこには、球根だけでなくさまざまの花の種や盆栽までも売る店がずらっと並んでいました。こちらが私らにはピッタリ…。

と、前置きが長くなりましたが、いよいよハーグに向けて30分ほどの電車の旅の始まり。駅で電車を確認したら途中のライデン駅で電車を乗り換えしなければならないことがわかりました。そしてあれこれ調べているうちに下車してライデン大学の植物園を見学することにしました。気軽に途中下車できること。これがおまかせツアーのいいところです。
ライデン大学はベアトリックス女王の母校であり、オランダで唯一の日本語講座があるという。しかし家庭菜園家にとって最大関心事は、幕末の頃来日して長崎・出島で日本人に医学を教えたり日本の植物調査に先鞭をつけたシーボルトのこと。
この植物園にはシーボルトが日本で収集した植物が栽培されているという。
植物園はライデン駅から約1キロだが、重い荷物はあるし行き方がよくわからないのでタクシーで行くことに。植物園の門をくぐって右手の建物の白壁を振り返えると、そこに行書体で菅原道真の「東風吹かば匂い起こせよ梅の花…」の歌が大書されていてビックリ。どういういきさつで書かれたかは別として、とても優れたユーモアのように感じました。

植物園は有料。受付で700円ほどを払って園内に入るとすぐにガラス張りの温室があり、そこを抜けると、すぐに瓦をのせた赤い壁に囲まれた日本庭園が右手に。そのなかはシーボルトの石像がアジサイの花に囲まれて建っていたりケヤキやフキ、イロハモミジ、ホトトギスムラサキシキブなど、日本でおなじみの植物が植えられていて花を咲かせていたり実をつけていました。イチイの木が鮮やかな赤い実をつけていてとても綺麗。日本より2週間ほど季節の進行が早いように感じました。

さらに奥に進むと、いわゆるシーボルト植物と呼ばれるものが出てきました。そうした植物には、植物名が筆字で書かれたプレートが根元にたっているので、初めての人にもすぐわかりました。彼は多数の樹木や草花を日本から持ち帰ったが13種15本の植物がいまでも生育しているらしい。この大学で研究を行ったリンネの胸像もありました。彼は動植物の命名法を世界に提唱し、いまでもそれが使われています。

それほどの広さはないので、小一時間ほどで見学終了。入り口の場所に戻ると、小雨にもかかわらず大勢の見学者が訪れていて賑わっていた。
植物園のすぐ近くにシーボルト・ハウスがあるというのでそこも見学することにしました。ここは日本から帰国したシーボルトが最初に住んで「日本」という本を書いたり、収集した日本の資料を展示・公開していたところ。館内には、彼のサインの入ったアジサイの標本もあって感激。お滝さんとの間にできたイネさんの末裔の女性の方がシーボルトのことを語る映像なども見ることができました。

ライデンも運河があったり風車がたっていたりで、とても景色のいいところ。ゆっくりしたいが先の予定もあるの駅まで1キロの道を旅行バッグをゴロゴロひきながら歩いて駅に向かう。次はいよいよハーグです。
ハーグ中央駅に着いて、駅前にあるホテルにチェックインをすませフェルメールの絵を見にゆくことに。美術館は約1キロほどの場所だというので歩くことにしました。ハーグは、オランダ第3の都市だということですが、官庁などが集まり、女王陛下が執務されるノールダイン宮殿がありその回りも緑が多くとても落ち着いたところ。
駅周辺には新しい近代的なデザインの建物があるが、少し市街の方に入ると、路面電車と自転車と人、そして車とが同じ路面を行き交う設計になっていて、あらためてその素晴らしさに感動しました。路面は昔からそこにたっている古い建物の間をくねくねと走っており、大人も子どもも、観光客も自転車道や歩道だけでなく車道や電車の軌道の上をその方向に歩いたり渡ったりと、ごくごく自然に共存しているのにはまったく驚きました。でもそれがオランダスタイルのようで、首都アムステルダムでもそんな風景が見られた。人口過密、人口急増を前提にすべての事柄が仕切られ、土地の高度利用とか、有効活用、安全優先といったキーワードがはびこるかの国も、そろそろこうした社会のあり方を学び直す必要があるかもしれない…と柄にもないことが頭をよぎる菜園tific Farmerでした。まずはフェルメールの絵を見なければ…。

フェルメールの絵はアムステルダム市内の美術館でも見ることができるが、「真珠の耳飾りの少女」が展示されているのはマウリッツハウスと呼ばれる王立絵画陳列室(美術館)だけ。建物の正面の壁には、その絵が描かれていてすぐわかりました。
ここには数え切れないほどの作家の絵が収蔵されていて、絵の題材や大きさもさまざま。宗教画から風景画、貴族や人々の生活を描いた作品、肖像画など。いまにも牛が鼻を鳴らせてむくっと起きあがりそうな作品や分厚い本にびっしりつまった活字までリアルに書き込み、読みふける老女の顔や手、指先のしわまで描写した作品の数々には、にわか写真家のFarmerはそれを表現する言葉がありません。この年になるまで、日本人ほど器用な民族はいないと日頃思いこんできたのに…。
それにしても、少女が分不相応の真珠の耳飾りをつけて、どこかしらこわばった表情で描かれていて貴族の少女が晴れ着を着飾った絵とはまったく異なる絵はとても印象的。ほかにもレンブラント出世作と言われる絵もありましたが、昆虫写真を撮るFarmerには、果物のさり気ない静物画に、シロチョウやトンボ、そして小さな蟻がいまにも動き出しそうに描かれている作品に心ひかれる始末。それにしても果物の表面に宿る滴がスーッと糸をひいて落ちそうで思わず手を出しそうに…。
絵をみて、塔が2本たった古い建物の広場を横切り、それが国会議事堂だとあとで知ったのですが、ベアトリックス女王の宮殿の庭を散策。紅葉しかけた菩提樹の生け垣が、お洒落な建物とマッチしていて落ち着いた雰囲気の建物に感心しましたが、ここの女王様は国民からの人気度がとても高いとか。

と、色々の感動で胸をいっぱいにしながら再び街の路地へ。テーブルと椅子がくねくねと曲がる路地にそって長く並べられ、たくさんの男女がビールを飲みながらおしゃべりしている姿を見たしながら古い建物の街をブラブラ。どうぞ、と誘われたのに時間がない。後ろ髪を思い切り引かれる思いで、ホテルに返るFarmerたちでした。


=続く=