キアゲハ“サブ”の羽化

(きのうの続きです)
頭目のアゲハが飛び立ったのが昨日の朝6時ごろ。そのあと2頭目の蛹を確認すると羽の模様が透けてみえていましたが、まだ大丈夫だろうと朝食にしました(写真は午前6時44分、以下同じ)。

で、ふたたび蛹のところに戻ってみると、そこには蛹から抜け出したばかりのキアゲハがいました。写真をとったのはいいのですがピントは抜け殻の方にあっています。よほど慌てたようです。それでも、まるで寝起きといった感じが出ています(7時16分)。


たしかにジロ、サブは同じ日に蛹になったので、同じ日に羽化しても何の不思議もないわけです。ここにありますが、この経験を生かしてもう少し頑張れば、脱出の瞬間の撮影ができたのに…と考えると残念でなりません。今回の自由研究での最大の失敗です。ひょっとしたら変身の瞬間は人目に触れさせないようになっているのか、と考えたくなります。 
キアゲハは、ブルブルと体を震わせながらドンドン羽や触角が伸びてゆきました。体の中から空気か何かが羽のすみずみに行き渡りその力で伸びてゆくように感じられます。わずか3分ほどでこんなになりました(7時19分)。まだ尾っぽ(尾状突起)はリボンのようにねじれています。

そして、これが10分後。ここまでくると、アゲハの成虫らしくなってきました。でも、足の力が弱いのか、重い体を支えるので精一杯という感じに見えます(7時26分)。

誕生から30分以上が過ぎると「寝起きの姿など関係ないわ!」と言わんばかりに別人のようにすましています(7時51分)。この格好を見ていると「おたかくとまる」という言葉を思い出して、おかしくなりました。

そして、しばらくすると「私の背中も綺麗でしょう」と羽をひろげて背中を見せてくれました。横に13センチ、縦が6.5センチですから立派なキアゲハです。ここにありますが、ニンジンの葉をもりもり食べてふっくらと太った幼虫が、こんな美女に生まれ変わるとは感動的です。ただし、オスかメスなのか、ホントのところは私にはわかりません(7時53分)。

こんなに美しい造形をだれが何をもとに創造したのか。触角、目、口(正確には口吻:こうふん、蜜を吸うための器官で通常はぜんまい状にしまわれている)、体の線や羽などの模様は完璧なデザインに見えます(8時53分)。

ただ、近づいてよく見ると美女の背中は意外に毛深い。幼虫時代にはこんな毛が生えるなんて思いもよらないことですが、1週間たらずの蛹のなかでこんな長い毛のもと(基)ができたのでしょうか(9時5分)。

鶴などが孵化時にそばにいる人間を自分の親と勘違いする、といった話を耳にしますが、このキアゲハもそんな風情で、カメラを向けている私を全然警戒しないのです。おかげでたくさんの写真を撮影できました。はたしてチョウにもそういう「すり込み」といったことが起きることがあるのか。
それとも、ここを自分の居場所だと考えているのでしょうか。よほどこの部屋が居心地がいいのか、窓をあけて風を入れてもじっとしています。昨日のジロも、もう少し休ませておけば良かったなと思うくらいでした。
しかし、誕生から4時間が過ぎようとするころいよいよ旅立ちの時間がきたようです。ようやくジロはニンジンから飛び立って窓の外の楓の木にとまりました(11時22分)。

この季節はオナガの数が増えます。時折、ギャー、ギャーと鳴く声が聞こえています。チョウにとって一番のリスクは鳥。その意味では、できれば飛び立たせたくないし部屋で飼育してやりたいところですが…、やはり自然に帰すのがいいのかなと見送りました。12時過ぎまでここにじっとして、そのうちにどこかへ飛んでゆきました。

キアゲハのメスは、1頭で100個ほどの卵を産むそうです。キアゲハの数がほぼ安定しているとすれば100個の卵から1,2頭の成虫が誕生し、それらがふたたび100個ほどの卵を産卵するといった循環が繰り返されていることになります。自然の状態では100分の1か2の確率なのに、今回のようにちょっと人間が手を貸すことで4頭のキアゲハから3頭の成虫が誕生しました。人手が加わったことで自然のバランスが簡単に変わる恐れがあるというわけです。
今回の自由研究から学んだのは、今更ながらのことですが、人間の行為は生き物の世界にさまざまな影響を与えるということ。長い目でトータルに見ながら判断し行動することが大切です。もちろん、ここから飛び立ったキアゲハはその直後からリスクに曝されますので、これがすぐ100分の1か2の確率に影響を与えるとは考えられません。問題は行動の中味と規模です。
少し話が飛びます。ここにありますが、自然を大切にしていくという意味からは「関さんの森」のような都会の緑の取り扱いについては、もっと慎重であっていいのではないかと感じます。地球環境にさまざまな問題が発生しているこの時代に、古い道路計画に固執して何が何でも道路を建設するという選択がどれほど正しいのか。市当局は関さんや森を育む会の皆さん方の想いを真剣に受けとめて「関さんの森」を守ることを検討してほしいものです。
ということで、自由研究の山場は終わりました。そのうちシロも羽化するでしょう。ご覧頂いた皆さん、有り難うございました。


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