影向の松

東京・江戸川区に善養寺という寺があって、その境内には「影向(ようごう)の松」と呼ばれる老木があります。樹齢600年以上というもので東京都の天然記念物に指定されています。通常、神社仏閣の境内には、一年中青々とした葉を伸ばす松の木を「神仏のより代」として植栽されていることが多いのですが、ここもそうしたことで植えられたもののようです。

二年前の暮れのことですが、この松の元気がなくなってきたというので見に出かけたことがありました。そのときは松の葉はすっかり黄ばんでいていまにも枯れそうな気配でした。専門家の調査によれば、いくつかの要因が絡んでいたのですが、一番の問題は地下水位。この松の生えている一帯は旧利根川(いまでは江戸川)の河川敷にあたるため地下水位が高いのです。10年ほど前に松の近くの池を埋め立てしたことによって、それまでの地下水位が変化し松の根が水に浸された状態になったようです。このため、根から新鮮な酸素を取り入れることができなくなり、松の勢いが衰え葉も黄ばんできたわけです。原因が明らかになったので、地下水位を下げる工事が行われたそうですが、見にいったときは工事からそれほど時間がたっていなかったので顕著な効果が出ていなかったのです。

最近のことですが、この松が元気になったというのです。そこで日曜日に見に行ってきました。車で約30分ほどで着きましたが、現地に着いて驚きました。あれほど衰えて枯れそうな気配だった松が、すっかり緑を取り戻してすっかり元気になっていたのです。

この松の中心になる高さ8mほどの主幹は結構太いのですが、それから四方に太い枝が出ています。根株が横に逞しく張っていました。いくら根株が逞しくても葉が黄ばんでいては絵になりません。

太枝から大小のたくさんの枝や葉が出て直径約30mほどの広さにひろがっています。最近ではこの種の松を見ることが少なくなりましたのでとても珍しいものでした。

かつてはこの松の横にもう一本「星降りの松」という樹高30mほどの立派な松があったそうですが、昭和初期に枯れてしまったそうです。後継樹が植栽されていましたが、その木が大木になるには数百年の歳月が必要です。やはり現在ある老木を大切にして枯れないようにすることが大事だと痛感しました。

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